「介護が始まったら、お金はどのくらいかかるんだろう」
——親の体調が気になり始めたとき、そう不安になった方は多いのではないかと思います。
私もそうでした。介護保険で全部カバーされると思っていたら、まったくそうではなかったり、施設に入るとなると月額が想像以上だったり。調べれば調べるほど「人によって違いすぎる」と感じました。
この記事では、在宅介護と施設介護それぞれでかかる費用の目安と、介護保険の自己負担を決める仕組みを家族目線で整理しています。
費用は要介護度・所得・利用するサービスによって大きく異なります。この記事は「おおよそのイメージをつかむ」ための参考としてお読みいただき、具体的な金額は担当のケアマネジャーや地域包括支援センターにご確認ください。
介護費用の全体像:大きく2種類に分かれる
介護にかかる費用は、大きく「介護保険サービスにかかる費用」と「介護保険が使えない費用」に分かれます。
介護保険サービスは、訪問介護・デイサービス・施設入所など、介護保険が適用されるものです。利用者は費用の1〜3割を自己負担し、残りは介護保険から支払われます。
一方、介護保険が使えない費用もあります。おむつ代・食費・日用品・移動交通費・住宅のリフォーム費用(一部は助成あり)などは、全額自己負担になる場合があります。
「介護保険があるから安心」と思っていると、自費部分の出費に驚くことがあります。両方を合わせてイメージしておくことが大切です。
介護保険の自己負担割合はどう決まるか
介護保険サービスの自己負担は、原則1割です。ただし所得が一定以上の方は2割または3割負担になります。
要介護(要支援)認定を受けると交付される負担割合証には、自己負担割合が記載されています。負担割合証は、毎年、前年の所得等をもとに判定され、8月1日から翌年7月31日までの期間で切り替わります。自己負担割合が変わる場合もあるため、手元の負担割合証を確認しておきましょう。
介護保険サービスで使える上限の目安「区分支給限度額」
介護保険サービスを利用するときは、要介護度ごとに「区分支給限度額(区分支給限度基準額)」という1か月あたりの上限が決められています。
これは、介護保険を使って利用できるサービス量の目安になるものです。要介護度が上がるほど区分支給限度額は高くなり、利用できるサービス量も増えます。
区分支給限度額は、主に訪問介護・デイサービス・ショートステイ・福祉用具貸与などの居宅サービスや地域密着型サービスを利用するときに関係します。一方で、施設サービスや一部の居住系サービスなど、区分支給限度額の考え方がそのまま当てはまらないサービスもあります。
また、サービスの種類によっては、要介護度に応じて基本単位数が変わります。そのため、同じような利用回数でも、要介護度や利用するサービス内容によって自己負担額が変わる場合があります。
| 要介護度 | 区分支給限度額 | 1割負担の目安 (1単位=10円の場合) |
2割負担の目安 (1単位=10円の場合) |
3割負担の目安 (1単位=10円の場合) |
|---|---|---|---|---|
| 要支援1 | 5,032単位 | 約5,032円 | 約10,064円 | 約15,096円 |
| 要支援2 | 10,531単位 | 約10,531円 | 約21,062円 | 約31,593円 |
| 要介護1 | 16,765単位 | 約16,765円 | 約33,530円 | 約50,295円 |
| 要介護2 | 19,705単位 | 約19,705円 | 約39,410円 | 約59,115円 |
| 要介護3 | 27,048単位 | 約27,048円 | 約54,096円 | 約81,144円 |
| 要介護4 | 30,938単位 | 約30,938円 | 約61,876円 | 約92,814円 |
| 要介護5 | 36,217単位 | 約36,217円 | 約72,434円 | 約108,651円 |
※上記は1単位=10円で計算した場合の目安です。実際の金額は、地域やサービスの種類によって異なります。
ただし、区分支給限度額は「介護にかかるお金すべての上限」ではありません。おむつ代・食費・日用品費・交通費など、介護保険の対象外になる費用は別にかかります。
費用が不安な場合は、サービスを利用する前に「月の自己負担額はどのくらいになりそうか」をケアマネジャーに確認しておくと安心です。
在宅介護でかかる費用の目安
在宅介護の場合、介護保険サービスの自己負担額は、利用するサービスの種類や回数によって変わります。所得が標準的な方(1割負担)の場合、月の自己負担は数千円〜数万円程度になることが多いとされています。
ただし、実際の費用はサービスの種類・利用回数・利用時間・加算の有無などによって変わります。サービス内容が変わると自己負担額も変わるため、利用前に月額の目安を確認しておくと安心です。
在宅介護でかかる主な費用の種類
| 費用の種類 | 介護保険の扱い | 備考 |
|---|---|---|
| 訪問介護・デイサービスなどの利用料 | 1〜3割負担 | 要介護度・利用回数で変わる |
| 福祉用具レンタル(車いす・ベッドなど) | 1〜3割負担 | 対象品目に条件あり |
| 住宅改修費(手すり設置・段差解消など) | 支給限度基準額20万円。自己負担は1〜3割 | 原則として工事前の申請が必要。対象工事に条件あり |
| おむつ・介護食・日用品 | 対象外(全額自己負担) | 自治体の補助がある場合も |
| 食費・日常生活費 | 原則自己負担 | 施設利用時は施設ごとに異なる |
上記の金額・条件は変わる可能性があります。最新情報は担当のケアマネジャーや市区町村の介護保険窓口でご確認ください。
月の自己負担が増えすぎたときの「高額介護サービス費」
介護保険サービスの自己負担が一定の上限額を超えた場合、超えた分が後から払い戻される「高額介護サービス費」という制度があります。所得によって上限額が異なります。
該当する場合は、お住まいの自治体から申請の案内が届きますので、見逃さないようにしましょう。
なお、高額介護サービス費の対象になるのは、主に介護保険サービスの自己負担分です。食費・居住費・日用品費などは対象外になる場合があるため、「月額費用すべてに上限がある」と考えないよう注意が必要です。
施設介護でかかる費用の目安
施設入所の場合、月額の費用は施設の種類によって大きく異なります。特別養護老人ホーム(特養)と有料老人ホームでは、月額の水準がかなり違います。
主な施設の種類と費用のイメージ
| 施設の種類 | 月額費用の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 数万円〜十数万円程度 | 原則として要介護3以上が対象。入所希望者が多く、地域によっては待機が長くなることも |
| 介護老人保健施設(老健) | 数万円〜十数万円程度 | リハビリを中心とした施設。在宅復帰を目指す方向け |
| グループホーム | 十数万円程度 | 認知症の方向けの小規模施設。共同生活を送ることで自立した生活を目指す |
| 住宅型有料老人ホーム | 十数万円〜数十万円程度 | 介護サービスは外部と別契約。施設によって費用差が大きい |
| 介護付き有料老人ホーム | 十数万円〜数十万円以上 | 介護サービスが施設に含まれる。設備・環境によって差が大きい |
上記はあくまでイメージです。実際の費用は施設・地域・居室タイプ・所得などによって大きく異なります。見学や資料請求で必ず確認してください。
特養や老健などの介護保険施設、またショートステイ(短期入所)では、所得や預貯金等の条件により「負担限度額認定」の対象となり、食費・居住費の負担が軽減される場合があります。対象になるかどうかは世帯の課税状況や本人の収入・資産状況などで変わるため、市区町村の介護保険窓口で確認してください。
事前に確認しておきたいお金のこと
「介護が始まってから慌てた」という声をよく聞きます。余裕のあるうちに確認しておくと、いざというときに選択肢が広がります。
- 親の年金額・貯蓄のおおまかな把握(介護費用に充てられる目安として)
- 生命保険・医療保険の内容確認(介護特約・認知症保障が含まれているか)
- 兄弟姉妹間で費用負担の考え方を話し合っておく
- 担当のケアマネジャーに、現在の要介護度で使えるサービスと費用感を聞いておく
- 高額介護サービス費・負担限度額認定など、軽減制度の申請漏れがないか確認する
お金の話は切り出しにくいですが、ケアマネジャーや地域包括支援センターは費用の相談にも応じてくれます。「具体的にいくらかかりそうか」を一度聞いてみるだけでも、不安が整理されることがあります。
介護費用に関する確認チェックリスト
- 親の介護保険証と負担割合証を確認したか
- 現在の要介護度と、月の区分支給限度額を把握しているか
- 高額介護サービス費の対象になりそうな場合、申請方法を確認したか
- 施設入所を検討する場合、負担限度額認定の対象かどうか確認したか
- 親の年金・貯蓄のおおよその状況を把握しているか
- 生命保険・医療保険に介護に関する特約があるか確認したか
- 費用について家族間で話し合いをしたか、または予定があるか
まとめ
介護費用は「在宅か施設か」「要介護度」「所得」「利用するサービス」によって、人によって大きく違います。正確な金額は事前には出しにくいものの、おおよそのイメージと仕組みを知っておくだけで、心の準備が変わります。
介護保険には、高額介護サービス費や負担限度額認定など、利用者の負担を軽くするための制度があります。「申請していなかった」ということのないよう、担当のケアマネジャーか市区町村の窓口に一度確認しておくことをおすすめします。
まず一つだけやってみるとしたら——「親の介護保険証と負担割合証を確認する」か「ケアマネジャーに今月の費用の目安を聞いてみる」、どちらかだけでも十分です。
※この記事の制度・費用に関する情報は記事作成時点のものです。内容は変更になることがあるため、最新情報は必ずお住まいの自治体・担当ケアマネジャー・各事業所でご確認ください。

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